鴨川市・鴨川市教育委員会主催「嶺岡牧シンポジウム」開催!



 2019年3月17日(日)、鴨川市吉尾公民館講堂にて、鴨川市・鴨川市教育委員会主催「嶺岡牧シンポジウム」が開催されました。行政主催でのシンポジウムということもあり、教育長の挨拶に始まり、市長をはじめ、市・県・議会の方々もいらっしゃいました。ポスターに力が入っています。
 
シンポジウムは、多くの市民の方々にご参加いただき、石川課長の司会で、以下のとおり行われました(13:00~16:30)。

・開会(月岡教育長)
基調講演
・第1部:嶺岡牧の価値を知ろう
 講演1「「国民を元気に!」のチャンピオン:嶺岡牧」(日暮氏)
 講演2「古文書から見た嶺岡牧の世界」(金澤氏)
・第2部:嶺岡牧の活用を考えよう
 講演3「日本遺産と嶺岡牧の活用」(鈴木氏)
 講演4「「嶺岡牧を知って活用を考える会」の活動」(吉田氏)
・休憩(鴨川市の酪農乳業史に由来する乳製品を試食)
・パネルディスカッション(日暮氏、金澤氏、鈴木氏、吉田氏、コーディネータ佐藤)
・閉会(フロアとの質疑応答)
 

 日暮氏の講演では、これまでの調査研究成果を踏まえて、国民の寿命を延ばしたい「醍醐」→体力・体格を欧米並みに「牛乳・乳製品食」→乳児死亡率をゼロに「乳児用粉ミルク」→栄養素を満たす食事から「地域食生活の再生へ」とのストーリーが明確に示され、嶺岡牧の価値が明らかにされました。

 金澤氏の講演では、江戸時代の嶺岡牧には、南部馬・仙台馬・中型馬・ペルシャ馬といった中型から大型の多様な馬が牛と共存していたこと、牧草を食べてしまうシカ、野馬土手を破壊するイノシシ、馬の天敵であるオオカミが生息しており、現在とは異なる生態系をなしていたことなどが、古文書の解析によって示されました。他の牧とは異なる嶺岡牧独自の特徴が明らかにされました。
 
 鈴木氏の講演では、日本遺産をめぐって、全国各地の踏査を踏まえて、認定・申請の現状、多様な事例、資源化のあり方などが示されました。とくに、高まる行政の役割、シリアル型(ネットワーク)によるさまざまな連携のあり方、地域の文化力をいかに発揮するかが大きな論点になっていると思いました。

 吉田氏の講演では、これまでの活動から、嶺岡牧をみられるようにする嶺岡牧再生ワークショップ、現地に立って学ぶ嶺岡牧エクスカーション、特徴を整理する嶺岡牧セミナー、活用方法を学ぶ文化資源利用サロンなどの成果が報告されました。

 以上の四つの基調講演は、いずれも現場に立脚する成果であることから、迫力があり、熱量が感じられる素晴らしい内容になっていました。


 パネルディスカッションでは、コーディネータの佐藤(本研究室教員)から4名の演者に対して、いくつかの論点を、文化資源視点から整理して投げかけました。
 嶺岡牧は原動力生産の牧から産業の牧そして暮らしづくりの牧として極めて個性的であるということ、嶺岡牧で早い段階から行われている管理型放牧は畜産としていかに評価できるかということ、多くの課題が残されているなかで嶺岡牧の文化力を高めるためには「地域の文化力」視点からどのようなことが考えられるかということ、嶺岡牧をめぐる市民達の膨大な成果を今後いかに推し進めるかということなどについて。
 パネルディスカッションは、未来志向で展開していたからでしょうか、あっという間に1時間が過ぎていきました。長時間にわたり、ありがとうございました。